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危険な香りに誘われて
第6章 男の嘘
「話ついたかな」

突然の声に二人は、驚いた。

「真理さん、いつの間に帰ってたの」

「さっきね」

真理は、千佐子の頭にキスを落とした。

「ただ今、体調どう?」

「うん、大丈夫」

マジマジと二人を見つめる。具合が悪いの?そんな風に見えないけど・・・。
真紀は、ハッとした。

「えっ、千佐。もしかして」

「まだ安定期じゃないんだけどね」

千佐子は、自分のお腹に両手を乗せて、幸せいっぱいの笑顔を見せた。まだ、膨らみもしていないのに、そこにいる命を愛おしく思う母親の顔が垣間見える。

「もう少ししたら、皆に報告するから、まだ内緒にしてくれるかな」

真理が、人差し指を唇に当てる。大切な妻の体を労わる夫。
少し前まで、恋人のような雰囲気だった二人。今は、ちゃんと夫婦に見える。
子供って偉大だ。
夫婦の絆を強くするのかもしれない。
真紀は、笑顔で応えた。

「分かりました。千佐、体大事にしてね」

「ありがとう。ねぇ真紀、ご飯食べて行って」

「帰って、賢也のご飯作らないと。ごめん、また今度ゆっくり」

立ち上がりバッグを手にすると。

「真紀ちゃん」

真理に引きとめられた。

「はい」

「色々あるかもしれないけど。あいつを見捨てないでやって。あいつには、真紀ちゃんが必要なんだ」

色々って?真紀は、首を傾げた。

「オカケンのこと宜しく頼むな」

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