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危険な香りに誘われて
第6章 男の嘘
家に帰ると真紀は、急いで晩御飯の仕度を始めた。

今夜のおかずは、カレー。
玉ねぎとにんにくを炒め、そこに小麦粉とカレー粉を加え弱火で炒める。水、野菜を加えて、焦がさないように煮込む。千佐子に教わったカレーは、真紀の好物でもある。賢也も気に入ってくれるといいんだけど。
付け合わせには、玉ねぎのスライス、ひじき、豆腐、鰹節、海苔を散らした和風サラダ。
醤油ベースのお手製ドレッシングも用意した。

壁の時計を見上げれば10時半過ぎ。
そろそろかな。

玄関扉の開閉音が聞こえ、真紀は、リビングから廊下をのぞいた。

「ただ今。真紀、充電」

賢也は、両手を広げるとガバッと覆いかぶさるように抱きついた。

数十秒の抱擁、甘いキス
出かける時のいってらっしゃいのキスも、ただ今の充電も、すっかり日課になってしまった。

「今夜は、カレーか」

「うん。カレー好き?」

「お前が、作るものなら何でも」

「褒めても何も出ないよ」

笑顔が返ってくる。自分ためだけに向けられた笑顔、それが何よりの褒美。
賢也は、自分の腕の中で微笑んでいる恋人の唇に、触れるだけのキスを落とした。


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