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危険な香りに誘われて
第6章 男の嘘
翌日、真紀は、久しぶりに残業。帰りが遅くなった。明日は、休みだ。賢也を誘って、外食しよう。駅からバスを乗り継ぎ、岡塾へ向かった。
勤めているだけだと思っていた塾、その実、経営者だと知ったのは、三日前。
働く必要なんてないのに、月曜から金曜まで、自らも講師をしている。

突然行って、ビックリさせよう。と言うのは、建て前。本音は、疑いが、拭い去れないのだ。
塾の敷地内に止まっているスカイラインを見て、真紀は、ほっと息を吐いた。

もうすぐ10時。そろそろ賢也が、出てくる。
車に近づくと、人影が見えた。真紀は、足を止め、目を凝らした。
スカイラインにもたれるように立っているのは、自分より若い女性。

真紀は、他の車の陰に隠れるように身を潜めた。

「加賀?」

声を聞いて真紀の心臓が飛びはねた。
賢也だ。そっと様子を伺う。

「先生」

弾んだ声。この塾の生徒?

「何やってんだ」

賢也の口調は、ぶっきらぼうで、冷たい。

「待ってたの」

「あのな、加賀」

「前みたいに美香って呼んでくれないの?電話しても出てくれないし、何で急に冷たくなったの?」

加賀は、賢也に近づき、飛びつくように抱きついた。

「おいっ」

「いいじゃない」

うわわわ、私、えらい所に出くわしちゃった?
どうしよう。これって浮気?真紀は、動揺し、激しく鼓動する胸に手を置く。こんな所を見て、疑うなと言う方が無理だ。

「やめろ、人に見られる」

「私は、平気だよ」

「俺は、平気じゃねぇんだよ」

不機嫌な声。見られて困るってことは、まさか、高校生なのか。

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