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危険な香りに誘われて
第6章 男の嘘
車の陰に隠れるようにしゃがみ、右往左往していると、エンジンの音がして、真紀は、立ちあがった。
駐車場を出ていくスカイライン。
加賀の姿も無かった。
スカイラインが止まっていた場所へ駆け寄り、真紀は、呆然と立ち尽くした。

一筋の涙が、つーっと頬を伝ってアスファルトに沁み込んでいった。
また、裏切られたのだろうか。
修平の時よりもずっと胸が、痛い。
悲しい気持ちで胸が、張り裂けそうだ。

真紀は、岡塾を出て、バス停へ向かった。
30分に1本しかないバスを待っていると、ぽつり、ぽつり、空から雫が落ちてきた。
雨足が強まり、屋根もないバス停で5分もしないうちにビッショリ濡れてしまった。
バスは、まだ来ない。
ずぶ濡れでは、乗車させてもらえるかどうかも分からない。
仕方なく、マンションまで歩くことにした。

真紀の涙は、雨に消されていた。お蔭で、周囲の人に泣いていると気づかれずに済んだ事だけが救いだ。
コンビニで傘を買おうかとも思ったが、今更差しても何の意味も無い。


帰っても賢也は、いないかもしれない。
さっきの彼女とホテルに行ったかもしれない。
生理になったせいで、最後の一線を超えずにいる。
賢也だって、いい加減、溜まったものを吐きだしたいと思っているはずだ。

来るんじゃ無かった。見たくなかった。濡れた服が、肌に張りついて気持ち悪い。
真紀の足は、自然と早くなっていった。
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