この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第10章 兄と弟と母と。
「と、言われたけれど……自分で直接行けば良いじゃない」
喜んだ割にはリリアはミゲルの横で文句ばかり言っていた
下ろした髪
これを上げさせてもらえなかったことも、彼女の不満の一つらしい
「まだそんなことを気にしているのか。大丈夫だ、こうして庶民の格好をしていればそんなこと誰も気にはしない」
「そういう問題じゃないのよ。恥ずかしいの」
「何故だ? よく似合っているのに」
「似合ってるって……」
「女は自分に合う格好をするのが一番だ。その髪はとても……良い」
初めて自分の意見を述べたミゲルに驚いてリリアは目を丸くした
ミゲルは急いで彼女から視線を逸らす
「……レオンが、そう言っているからな」
人の話を聞くのは得意でも、自分のことになるとテンで駄目なようだ
「レオンが直接行かない理由だが」
かなり不自然に話題を変えた
「行かないというより、行けないんだ」
「え?」
「ファルツの人間はいつ何時襲われるか分からないからな」
「そんな……」
確かに身分あるものは貧民などからしてみれば腹立たしいだろう
だがこのアウスグライヒの人々はーーー