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果てのない海に呑まれて
第11章 救い
「ああ、俺の母はケチュア人だ」
ミゲルはそう言ってリリアの予想を肯定した
「そう、だったの……」
「ケチュア人が身近にいたお前にとってはどうだか知らないが、ほとんどの……特に西に行けば行くほど、俺たちは粗野で野蛮な人種だと思われている」
リリアは哀しくなった
生まれた頃から当然のように傍にいたから、そうでないことはよく知っている
そして西方から来た使用人や屋敷に出入りする貴族たちが彼らをよく思っていないことも。
「父はここより更に西にある都市の大貴族で、母は奴隷としてそこに売られた」
「奴隷……!?」
「知らなかったか? 頭が悪く力のある……とされているケチュア人は奴隷として最適だ。だからわざわざ子供を誘拐して売り飛ばす奴隷商人までいる」
それは彼女の知る世界の外の話だった
驚愕のあまりリリアの唇が震える
「それで…そのあとお母様は……」
「父に気に入られ俺を身籠った。そしてそれが分かった途端あっさりと捨てられた」
「……」
「……と、母からは聞いている」
その後はミゲルと二人、各地を放浪して必死に生きたが、この街の近く、小さな孤児院に彼を託して母は力尽きた