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果てのない海に呑まれて
第11章 救い
たったそれだけの情報で、一体何が分かったというのだろうか
リリアは躊躇いなく歩き出したミゲルに付いていきながら尋ねた
「あいつが母親に会った後は大抵落ち込んで夕陽でも見ながら感傷に浸っているんだ」
二人は二階へ上がり、ミゲルが一つの大きな扉を開ける
そこには彼の言った通り、西日に赤く照らされた広い部屋と、その窓辺に保たれる黒髪の男がいた
「綺麗……」
窓からの景色を言ったのか、彼を含む全てのことを言ったのか、とにかくリリアは大きく息を呑んだ
男がゆっくりと彼女に顔を向け、少し笑う
「やっと帰って来たか」
陽の光が眩しくて顔はよく見えないが、彼の声は驚くほど弱々しく小さかった
男は喚び寄せるようにそっとリリアの方へ手を伸ばした
リリアはどうしていいのか分からずにミゲルの方を見る
しかしミゲルは彼からの目配せを受け半ば呆れたようにため息をつきつつも彼女を置いて出ていってしまった
「早く来い」
命令形であるのとは対照的にその声は柔らかい
それでもまだリリアは動けずにいた