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果てのない海に呑まれて
第12章 喧嘩するほど–––
「私はお前に笑顔を望むほどにお前を傷付けているな……」
レオンは擦れた声で小さく言うと、手綱を引いて屋敷の方へと馬を向けた
が、次の瞬間、犬がけたたましく吠え出し背後の茂みが大きく揺れた
「……!?」
レオンは急いで後ろを振り向く
そこには先ほどの鹿が一頭、此方をじっと見つめていた
しばらく互いに警戒するように動きを止め−−−
突然鹿が力尽きて倒れた
「……っ!」
震えたリリアをさらに抱き止せ、恐る恐る馬を近付ける
「……!」
鹿の脚には確かにレオンの放った矢が刺さっていた
だが背中からもう一本、別の矢に貫かれている
“一体誰が……”
この森に、自分たち以外の何者かがいる
レオンは緊張した面持ちで辺りを見渡し−−−
ゆっくりと現れた黒服の集団に深く息を吐いた
「弱らせておいてトドメも刺さずに放棄か?」
「コイツが思った以上に怯えていたんでな」
「勝手に連れてきておいて。
だから言っただろう、しつこい男は嫌われると。女の気持ちも考えず自分を押し付けようとするからそうなる」