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果てのない海に呑まれて
第13章 懐疑
その言葉の正当性はよく分かる
だが彼のやっている船上での行為は、それを逸脱した無抵抗の人々を力でねじ伏せるものではないのか−−−
リリアがそれについて訊ねるより先にレオンが話題を変えた
「だからお前も身を守る術だけは身につけておけ」
「え……」
部屋の奥にある棚に向かい、引き出しを開ける
取り出したのは鞘に収められた短剣だった
「こういう類の武器は刺突が一番だ。むやみに振り回しても隙が生まれるだけで逃げる暇もない。
持ち方もただ柄を持つのではなくこうして人差し指を鐔にかけるとより安定する」
剣を鞘から抜いてわざわざ実演してみせる
そして
「やってみろ」
とそれをリリアの方へ差し出した
“またこの人は……”
人の意見を聞くことなく突っ走るのか
「……嫌」
鈍く光る切っ先を見つめてリリアはあとずさった
「何故だ? 確かに私やミゲルが傍にいる時は護ってやれるが……」
「この屋敷の中でそんな危険なことは起こらないでしょう」
人を傷付ける行為など、出来ることなら覚えたくはない