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果てのない海に呑まれて
第13章 懐疑
「……そうか」
そんな彼女の様子を見てレオンはスッと剣を下ろす
「もうお前に故郷への気持ちはないんだな」
「……!」
「シエラに戻ればギスタール家を襲撃した者たちによって狙われるのは必至。だが戻る気がないというのであれば別に……」
「いいえ!」
リリアは叫ぶように言うと此方に向けられた柄を掴んで彼の手から引き抜いた
「シエラに戻る為なら早く言ってよ。やるに決まって……あ」
勢い余ってレオンの指を切ってしまった模様
リリアの目が傷口から膨らんで流れる真っ赤な血を捉えた
「ごめんなさい……!」
「……いや、いい。これくらい大したことはない」
レオンは剣を持ったまま震えているリリアを何やらじっと見つめている
そう、まるで観察でもするようにじっくりと。
「……? どうかしたの?」
「…何でもな……」
答えかけたところで二人のいる部屋の扉がノックされた
「レオン、急ぎ報告したいことが……っ!」
二人の姿を見るなり、ミゲルの顔が険しくなり腰に携えた短剣に手が伸びる
当然だった
目の前には主人に剣を向ける女と、その主人から滴る血
「お前やはり……!」
「……っ!」
「ミゲル、待て!」