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果てのない海に呑まれて
第13章 懐疑
だがーーー
彼はそこまで純粋でも、素直でもなかった
「ふーん、じゃ……そこまで言うなら証明してみせてよ」
「え……?」
リリアを見る彼の口元には、いつもの馬鹿にしたような笑み
「君は兄上がどんな人間かまだ全然分かってない……あの人が今まで何をしてきたのかもきっと知らないんでしょ。
あの身勝手な人間がもし本当に君を想って君の為に犠牲になるようなことでもあったなら……そうだね、認めてあげるよ」
ジェーニオはそれだけ言うとリリアの前から去って行ったーーー
「……」
今のは一体ーーー
「こんな所にいたのか。随分探したぞ」
ジェーニオの言葉に何やら言い知れぬ不安を覚え、廊下に立ち尽くすリリアの元にレオンが姿を現した
どうやらジェーニオとのやり取りは見られなかったらしい
「食事の支度、整っているぞ」
「え? 食事って、貴方も一緒に食べるの?」
「不満か?」
「そういうわけでは……ただ、いつもは違うから」
「特別な日くらいお前と共に食卓を囲むのも良いだろう。本当は使用人部屋なんぞで食べさせたくもないんだが、そうも言っていられないからな」