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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
と、空いている方の手でミゲルも引き寄せる
「お前は相変わらず仏頂面してんなぁ、ミゲル」
リリアからしてみれば今までにないくらい表情豊かなミゲルだが、ここの人々に比べればまだまだ。
男達の次の標的にされてしまった
「俺はレオンの護衛だ。浮かれて気を抜くわけには……」
「野暮な奴だな! そんなんじゃ女の一人もオトせねぇだろ。ほら、試しにそこのべっぴんさん口説いてみな!」
傍観者だったリリアの方へミゲルが押しやられる
「あ、おい……」
困り顔で向き合う二人
直後、ミゲルがさっと目を逸らすのとレオンがリリアを引き寄せるのとが同時だった
「ミゲルには」
リリアを腕の中に引き入れながらレオンは言う
「心に決めた相手がいるんだ。シエラの港でヘレーネという愛しの君が待っている」
「なっ、お前……!」
ミゲルは否定しかけたが、もう無駄だった
おおっ、とどよめく観衆の中でレオンはわざとらしく悩ましげなため息をつき、さらに続ける
「この前も港を発つ前日にたいそう熱い夜を…それはもう此方が連れて帰るのを憚るほど……」
「レオン貴様……」
「ミゲル! お前そんな相手がいたのかよ!」
「なんですぐオレたちに教えてくれねぇんだ!」