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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
ミゲルはあっという間に男たちに取り囲まれ、いくつもの手が肩を組もうとしたり頭を撫でたりともみくちゃにされる
「港に女置いて帰ってきちまうたぁ、罪な男だな!」
「ちょっとアンタ!」
甲高い声にその場にいた全員が振り向くと、そこには仁王立ちで此方を睨み付けるふくよかな女性がいた
「こんな所で油売ってないで、さっさと店に戻んな! 女置いて遊び歩くなんて、罪通り越してクズのすることさ!」
女はドスドスと足音荒く男たちの中を進んでくる
そして自分の夫の耳を掴むとそのまま容赦なく連れていこうとした
「いてててて! ちょっと待てって! ミゲルがよ! 結婚するかもしれねぇんだぞ!?」
「は!?」
「なんだって!」
女の鋭い視線がミゲルの方に移る
普段冷酷無比で通っているミゲルも女の放つ空気に思わずたじろいだ
「い、いや! 違うぞ! 俺は……」
「そんな大事なことをなんで先に言わないんだい!?」
胸を思いっきりはたかれミゲルはうっと息を詰まらせる
「そうと決まれば早速祝いの準備だ!」
「おい! 俺は結婚するなんて一言も……」
「ああ!? ヤるだけヤって捨てる気か!? 男の風上にも置けねぇな!」
「そんな無責任な野郎に育てた覚えはねぇぞ!」
「誤解を招くような言い方をするな!」