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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
ミゲルの訴えも虚しくどんどん話は伝わってゆく
やれワインを用意しろだの、今夜はご馳走だだの、祭りの喧騒と相まって広場の賑わいはさらに増していた
「心配すんな! 盛大な婚前祝いにしてやるからよ!」
最後に男がぽんっとミゲルの肩を叩き、皆準備に散っていった
「……随分と話がデカくなってしまったな」
「誰のせいだと思っているんだ!」
ミゲルは振り向いて他人事のように呟いたレオンに怒鳴りつける
「まぁどうにかなるだろう。いざとなったら本当に結婚してしまえば良い」
「何を馬鹿な……」
「とにかく祝ってくれるというんだ。ありがたく受け取っておけ」
「この……っ」
再び声を荒げかけたミゲルの目に、レオンの腕の中で不思議そうに首を傾げるリリアの姿が映った
「ヘレーネって、誰?」
「…っ……誰でもないっ」
「ミゲル、子供でもいるの?」
「……」
「プッ…ククク……」
もはや否定することも出来ない程唖然とするミゲルの横でレオンは口を押さえて小さく笑い声を漏らす
どうやら先の男の発言が本当に誤解を生んでしまったようだ
「いるわけがないだろう! もういい! 俺は帰るからな!」