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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
狩人が自分の突き出したナイフに獲物が刺さっていないことに気付いた時にはもう遅い
地に伏せた相手に足払いを掛けられ、襲ってきた男は派手な音を立てて地面に転がった
「クソッ!」
ダンッ
悪態をついて落としたナイフに手を伸ばす狩人を獲物の足が踏みつけ動きを封じる
狙った獣は敵に向かって鋭い牙を向けた
「こんな素人を使うとは、私も舐められたものだな」
「ぐあっ……!」
レオンは足で押さえたままその腕を持ち上げる
肘から先が人間にはあり得ない方向へと曲げられてゆき、男が情けない声を上げた
「そんなに簡単に殺せると思ったか?
祭りの会場で殺気を隠すこともなく、こうして私を追って罠にかかったことにも気付かない奴が」
するとどこからともなく黒服の男たちが現れ、二人の周りを取り囲んだ
獲物は男の方だったのだ
そして狩人であるレオンの手には更に力が籠められる
「言え。誰に雇われ私の命を狙った?」
「ぐっ……誰が、言うもの…かっ……ああぁあ゛!」
ミシミシという不穏な音
それでも尚レオンの手は止まらなかった