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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
「……私の杯に毒を盛ったのも、お前か?」
「……」
パキッ
「ぃいい! ちげぇ、それはオレじゃねえ! 仲間の方だ」
「仲間……ファルツ家に入り込んでいるのか」
静かな声で尋問するレオンだが、その瞳孔は見開き、男を踏みつける足には更に力が籠もっていた
「……レオン様、どうかなさいましたか?」
その僅かな感情の昂ぶりに側近の一人が怪訝そうな顔をする
「後は私たちで処理します。レオン様はどうぞ祭りに……」
「いや、私が吐かせる」
レオンらしからぬその様子に周りの人間は動揺を隠せずにいた
普段から気ままに、したいように振る舞って見えるレオン
だが本当は常に感情を押し殺して冷静に動いているのだということを側近たちはよく理解していた
そしてそんなレオンから理性を奪い去る人間を、彼らは三人しか知らない
今レオンを支配しているのは、その内の一人−−−リリアへの想いだった