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果てのない海に呑まれて
第15章 春のキザシ
「あの日テーブルにあった杯は三つ……毒はその全てに入れられていた」
ミゲルの杯にも、そして−−−
「私がどの杯に口をつけるか分からなかったのか……やはり素人仕事だな。誰かが毒に気付かず先に飲んでいたらコトが露見してしまっただろう」
その“誰か”がもし−−−
もしリリアであったなら−−−
「お前たちは私の大事なものを危険に晒した。その上……」
“怯えさせた”
リリアの泣き顔が目に浮かぶ
「…あ゛ぁ……」
尋問に関係なく締めあげられてゆく腕に男はもう呻き声さえ満足に上げられなかった
「レオン様、それ以上は血が噴き出してしまいます」
側近にそっと進言されてレオンははっと我に返る
「……」
「返り血を浴びたお姿で、リリア様のもとへ戻られますか」
「……そうだな」
部下の言葉に冷静さを取り戻し、ゆっくりと男の腕を放した
他の側近たちが逃げないようすかさず押さえ付ける
「…ハァ……」
レオンは目を閉じて小さく息を吐いていた
「後は我々にお任せ下さい。必ず全て暴きだしますから」
「ああ…任せた……」