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果てのない海に呑まれて
第16章 相容れぬ心



コンコン










「父上、レオンです。お呼びと聞いて伺いました」

「……入れ」



疲れ切ったような低いしゃがれた声が許しを下す

レオンはそれに従って父の待つ部屋へと入って行った



「本当に行くのか」



彼がまだ数歩と進まないうちに、声の主は奥の椅子から尋ねてきた

高齢故に待つことが出来なくなっているのだろうか



いや−−−



その男、黒かった髪はほとんど白く染まり、目は窪んで隈を作っていたが、齢未だ四十半ばであった



「はい。こうでもしなければ相手も尻尾を見せないでしょうから」

「そう上手くいくか」

「この屋敷に入り込んで情報を流していた者を捕えました。私が何も知らずに南へ向かう準備をしていると偽の内容の書簡を書かせて送ったので、更に油断させることが出来るかと」

「…そうか……」



レオンの父ベルナルドは息子の手際の良さに複雑な気持ちでため息をつく

彼がこれ程までに秀逸であるが故に、今回の事件を招いてしまったのだから。


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