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果てのない海に呑まれて
第16章 相容れぬ心
ヒステリックに叫ぶ妻に迫られ父は何も言えずにいる
もう見慣れた光景であった
「良いですか、このファルツを継ぐのはジェーニオ様だともう……」
「母上、そのことですが」
レオンが静かに口を挟み、カタリナは険しい顔で義理の息子の方を振り返る
「その件は今しがたお断りしました。私も母上と同じく、ジェーニオが当主として相応しいと考えておりますので」
「あら、継ぐ気もないのに随分熱心に活動なさって……頼もしいこと」
カタリナは皮肉気に笑うと、再び夫にキッと向き直った
「やはり跡目の話を……」
「もう良い! この話は終いだ!」
「いいえ良くありません! 後を継ぐのはジェーニオ様だと、はっきり言って頂くまでは……」
「分かった! 次期当主はジェーニオだ! もう何も言わん!
二人ともとっととこの部屋から出ていけ!」
主人の命令に二人は一礼してすぐに部屋を後にした
「……」
扉が閉まるまではお互い無言のまま。
だがベルナルドに声が届かなくなった瞬間、カタリナは尊大そうに顎を突き出しながらレオンに向かって言った
口元には先程と同じ歪んだ笑みが浮かんでいる