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果てのない海に呑まれて
第16章 相容れぬ心
「……そう言えばそうだったな」
「全く……自分が知っていることはリリアも全て知っているとでも思ったか?」
「まぁそんなところだ」
「……」
ミゲルの口から深いため息が零れる
「……とにかくだ。かなり不安そうな顔で書庫の中をうろうろしていたぞ。眉間の皺が取れなくなる前に早く行ってやれ」
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書庫の中で、リリアは棚から本を取っては適当に開いて見つめ、また棚に戻すということをもう何度も繰り返していた
やはりあの祭りで何かあったのだろうか
あるいは、贈り物を断ったが故に嫌われてしまったとか−−−
「……っ」
そう思うと胸が軋むのは何故だろう
無理やり連れて来られて、あの男に振り回されてばかりの日々だったのに−−−
彼の強引さに、そして時折魅せる優しさと弱さに囚われてしまったらしい
いつも彼女の気持ちなど考えていないようでいて、本当はずっと寄り添ってくれていた
“…寂しい……”
もう充分に暖かい季節になったというのに、自分の横を通り抜けてゆく風はとても冷たく感じた−−−