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果てのない海に呑まれて
第16章 相容れぬ心



「……そう言えばそうだったな」

「全く……自分が知っていることはリリアも全て知っているとでも思ったか?」

「まぁそんなところだ」

「……」



ミゲルの口から深いため息が零れる



「……とにかくだ。かなり不安そうな顔で書庫の中をうろうろしていたぞ。眉間の皺が取れなくなる前に早く行ってやれ」



******************************



書庫の中で、リリアは棚から本を取っては適当に開いて見つめ、また棚に戻すということをもう何度も繰り返していた



やはりあの祭りで何かあったのだろうか

あるいは、贈り物を断ったが故に嫌われてしまったとか−−−



「……っ」



そう思うと胸が軋むのは何故だろう

無理やり連れて来られて、あの男に振り回されてばかりの日々だったのに−−−



彼の強引さに、そして時折魅せる優しさと弱さに囚われてしまったらしい

いつも彼女の気持ちなど考えていないようでいて、本当はずっと寄り添ってくれていた



“…寂しい……”



もう充分に暖かい季節になったというのに、自分の横を通り抜けてゆく風はとても冷たく感じた−−−


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