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果てのない海に呑まれて
第19章 芸術の都
ふーん、と言いつつも男は特に怪しむ様子もなく教え始めた
「去年の夏くらいによ、このリーディエのドンがシエラと優先的に貿易するって言い出してなぁ」
「……っ!」
南との新たな貿易ーーーその祝い
それはリリアが家族と過ごした最後の夜ーーー
「なんつったかそのー……最近物忘れが激しくていけねぇや。ギ、ギ…ギル……」
「……ギスタール」
「そーそーそれそれ! そのギスタール家が半年前くれぇに何者かに襲われたんだってよ。
可哀想に、その家の人間はみーんなオダブツ。んでその代わりにファルツがこれからの客だって、ドンからお達しがあったんだよ」
つまりギスタールが滅んだ為にファルツがこの都市に進出してきたーーー?
「……ファルツとはそれまで取引していたの?」
「まぁ少しだけな。なんでも坊っちゃんが大の美術品好きらしくて……ああ、それぁ流石に知ってっか」
「…ええ……」
「ま、オラみたいなみみっちぃもん造ってる人間にゃ目もくれなかったけどな。こんなのでも買ってくれるようになんなら、ギスタールがファルツに変わろうが別にカンケーねぇ」