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果てのない海に呑まれて
第3章 レオンという男
「不平や不安を溜め込むのは仲間内の結束を乱す。相手がレオンだろうが遠慮なく言ってやれ」
「じゃ、じゃあ……」
お前は私に不満でもあるのかとミゲルを睨み付けるレオンに乗組員の一人が恐る恐る切り出した
「あの…昨日乗せた娘っ子のことで……」
「リリアか? 欲しがってもくれてやらんぞ」
「いやその、オレたちとしちゃあ女を船に乗せるってのは嵐を呼ぶっつー言い伝えが……」
本気で不安がる乗組員を前に、レオンはそんなことかと笑い飛ばす
「ふん、嵐か……あの小さい娘にそんなものが呼べるとは思えんがな」
そして笑顔のままスッと目を細めて低い声で言った
「今まで私と乗っている時に一度でも嵐に遭ったことがあるか? ん? それともお前たちの中では空から水が降ってくれば嵐なのか?」
「す、すいやせんした!」
レオンの出す空気に圧倒され乗組員はあっという間に自分たちの持ち場に戻っていく
「不憫だな」
ミゲルは笑わないよう必死で堪えながら言った
「お前……面白がってるな?」
怒る主人が可笑しくてしょうがないかのようにミゲルは声を立てて笑い出す