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果てのない海に呑まれて
第20章 違われた約束
ギイィ…
入り口が錆びた音立てながらゆっくりと開いてゆく
目の前にはキラキラと陽を弾く美しい水面が広がっていた
向かいに舟の揚場があり、客に気付いた船頭がすぐに舟を漕いでやってくる
「……ドンの邸まで」
男が小さく呟くと、船頭は何やら訝しむようにレオンたちを見た
だが側近が渡り賃を示そうとわざと金貨の多く入った袋をちらつかせた瞬間コロッっと表情変え、
「どうぞどうぞ、皆さんお乗りになって……え…足元気を付けて下さいね……」
などとニコニコするのだった
全員が乗り込んだのを確認し、舟が微かな軋みと共に動き出す
細長いゴンドラの、その尖った舷首がこれから向かう先を指し示す
舟は少し揺れながらも器用に方向を変え、左右に建物の壁が迫る狭い水路を進んだ
時折少し広い場所に出たと思うと、橋の影が皆の上を通り抜けてゆく
こんな時でなければ素敵な観光旅行だ