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果てのない海に呑まれて
第20章 違われた約束
「……お前がレオン・ファルツか」
「ドン・リーディエ……お会い出来て光栄です」
明らかな皮肉とともにレオンが深々と頭を下げる
側近たちもそれに続き、リリアも慌てて彼らに倣った
そしてゆっくりと頭を戻す
“……!?”
ドンと目が合ってしまった
少し太った図体に、茶色い髪と立派な顎髭にところどころ白いものが混じる彼は、戸惑うリリアをただじっと見つめている
「……」
そしてしばらくそうしていた後、やっとレオンに視線を戻した
「……それで、何の用だ?」
「フッ…ただご挨拶に窺っただけですよ。此方との関係が深まっているのに未だに代理人を通してでは流石に失礼かと思いまして」
「構わぬ。そこの代理人は実に有能だ。勝手ながら儂も色々と使わせてもらった」
二人が指すのは、レオンの後ろに控える黒服の側近たちの一人。
リリアが港で初めて見かけた男だった
「ええ、彼は有能ですよ……本当に」
「貴公直属の側近であろう?」
「いいえ? 彼はファルツに仕える人間です。私ではなく……ね」
静かなやり取りの中で、互いを探るような繕った笑み。