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果てのない海に呑まれて
第3章 レオンという男



中には綺麗な水が張っており、水面に自分の姿が映った



「何か気になる物でもあったか?」

「きゃ……っ」



思っていたよりもかなり早いお帰りにリリアは驚いて小さく悲鳴を上げる



「拭けと言ったのに……」



レオンは布を持ったリリアの腕を掴んで抱き寄せた



「出来ないなら私がやろうか?」



彼の顔には昨日と同じ、挑発するような笑みが浮かんでいる



「結構です……っ。自分で出来ます!」

「そうか」



リリアがもがくとレオンは意外とあっさり彼女を放した



「で、何を見ていたんだ?」

「えっと……この水瓶って、東方のものよね?」

「ああ、ケチュア人が持ってくる品だな」

「貴方たちもケチュア人と貿易を?」



ケチュア人

それはヴィークから遥か東の大地までを旅する遊牧民族

秋から冬になるとシエラの東にある草原にやってきて春まで寒さを凌ぐ

そのためシエラを牛耳るギスタール家とはかなり縁が深かった



「彼らと取引するのはギスタール家の特権だって聞いていたけれど」

「だから直接ではない。その……買ったんだ、シエラで」

「ギスタール家から?」


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