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果てのない海に呑まれて
第21章 寄せては返す–––
ミゲルも敵意のないことを示すため腰に残った鞘を床に置き、同じように傅く
「どうか我が部下の命だけは……私の為を想った忠義の臣です」
「此方とて忠臣を失った。これをどう償おうと言うのだ?」
つい先ほどまで悪戯に付き合わせただけと言っていたはずだが−−−
「では我がファルツから……」
レオンは顔を上げ、真っ直ぐにドンを見つめた
「ルチアーノ以上に優秀な部下達を数名、派遣致しましょう。勿論、当主直属の者を」
「何……」
「常に貴殿のお側近くに……見張りと、手足として」
後ろの方で、傅いていたミゲルが鞘を戻した
「は、は……さてどちらの手足なのやら……」
「そう答えるからには分かっているはずだ」
レオンの声が低く、冷たくなった
ぞっとするような眼光がドンを射抜く
「ファルツとリーディエが今後どのような力関係になるか……皇帝はよく吼える犬は欲しがらない。
番をするのは我らだけで充分……そうでしょう?」
「あ、ああ……」
魔物を前にして、老いた人間はただ震えることしか出来ない
「それに」