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果てのない海に呑まれて
第21章 寄せては返す–––
レオンは立ち上がり、口の端を歪めて笑った
「剣を突き付けられるだけならまだ良いものだ。次期当主なら其方に少しの落ち度でも見つければ喜んでこの芸術の都を手に入れに掛かるだろう」
サッと身を翻し、振り返ることもなく扉へと向かう
「ファルツの方々には…どうぞお取り計らいの程を……」
後ろから聞こえる声にもただ片手を上げ、ミゲルが代わりに一瞥して一同は去って行った
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「リリア様…と、お呼びしても宜しいですか」
「え……?」
久しぶりに聞く敬称を付けた呼び名にリリアは顔を上げた
その頬には幾筋も涙の跡があった
「レオン様が非常に大切になさっているようでしたので……よろしいですか?」
もう一度確認され、リリアは小さく頷く
「ではリリア様、何故レオン様の言い付けを破られたのです?
どんな命令にも従い、それ以外には動かないよう伝えたと…そう舟に乗る前に聞きましたが」