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果てのない海に呑まれて
第22章 移ろいゆく薔薇の中で
馬を安全に引くためにミゲルがニノと役目を代わる
一同は崖の緩やかな場所を選びながらゆっくりと谷底へ降りていった
まだ人が住んでいるのか、所々に小道のようなものが続いている
真っ赤な薔薇が幾重にもなって咲いているのを眺めながらレオンが静かに言った
「お前が前に言っていた……神は何故人間を創ったか。これがその答えだ。
神はこの世界を創造し、それを愛した。そして他の多くの者もそれを愛するよう創り出した。
この世界を愛す時……私は父なる神を最も傍に感じることが出来る」
「…世界を…愛す……」
リリアの瞳に一瞬暗い翳が射す
あの夜、この世界を憎んだ
目の前で壊れゆくものを、受け入れることが出来なかった
それでも−−−
どんな時も必ず陽は昇り、海は凪ぎ、花は咲く
今この瞬間、失くしてしまったものを傍に感じる
いや、きっと最初から失くしてなどいなかったーーー