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果てのない海に呑まれて
第22章 移ろいゆく薔薇の中で
「この道の先に小さな家がある。ファルツに仕える老夫婦が住んでいるから、そこに泊まらせてもらう」
薔薇の中を進みながらレオンはリリアに説明する
その時、再びニノと交代して馬上に戻ったミゲルがぴたりとその足を止めた
「……先客がいるようだぞ」
視線の先には、見覚えのある薔薇の紋章が施された馬車が。
「え、どうしてこんな所に……」
あの崖もここまでの道も馬車で通れるとは思えない
ここにくるまで馬車の轍も見なかった
「もう一本道があるんだ。川沿いから崖下を通って来る道が」
レオンはそう言うと面倒臭そうに舌打ちした
「この場所は嫌いだと言っていなかったか……」
とりあえず全員が馬を下りると、リリアとミゲルを伴って小屋に入る
「あっ……!」
「遅かったですね。リーディエでは色々と手間取ったようで」
金髪の男は驚くリリアに目をやると軽く鼻で笑った
「まさかここまで連れて来るなんて。彼女は本当に一族の一員として認められたようだ」