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果てのない海に呑まれて
第22章 移ろいゆく薔薇の中で
ミゲルはニノが消えた方向を見つめ、思い悩むように額を寄せた
「あんたは“ファルツ”に仕えていて辛いと思ったことはないのか?
例えばレオンとジェーニオ様……二人に同時に全く反対の命令をされたら、どっちに従う?」
「ファルツの側近がどれだけ面倒かということか……お前はどうする」
「決まっているだろう」
「……だろうな。
ま、俺はお前ほど不器用な人間じゃない。そういう時は上手く立ち回るさ」
ルチアーノは軽く笑うと、すぐに真顔になって言った
「レオン様に忠実なお前が時折見せる正反対に思える行動……何故そんな行動を取るのか、今はっきり分かった」
ミゲルの肩に叩くように手を置くと、
「あんまり一人で思い詰めるな。死んでから後悔するぞ」
冗談のような口調で、だが脅すようにそう言った
「……」
ミゲルはその言葉に対し、静かに彼の手を退ける
「それでもいい。たとえ誰に知られなくても、それがあいつの為になるのなら」
躊躇いなくそう言うと、主の側へと戻って行ったーーー