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果てのない海に呑まれて
第22章 移ろいゆく薔薇の中で
「何故かしら……昨日よりも薔薇の色が濃いような気が」
「ああ、それはファルツの薔薇の特徴でな。陽を浴びる程に色が濃く、深くなっていく」
濃く、深くーーー
それはまるで二人のようにーーー
「レオン!」
リリアの髪を優しく愛でていたレオンはミゲルの呼び掛けに少し眉を寄せ振り返る
「今行く」
何か仕事の話だろうと察したリリアは、
「私、もうしばらくこの辺りを見て回ってるわ」
と彼から離れた
「川が流れていたりするから落ちるなよ」
「分かった」
薔薇の間を縫い、奥へ奥へと進む
しばらく行くと、レオンの言った通り小さな川が姿を現した
「……レーテ河に続いてるのかしらね」
リリアは呟き、川の水を少し掬った
ーーーそういえば、この時期の水は美味しいと、昨日レオンが言っていた
「……」
周りに人がいないことを確認し、そっと掬った水を口元に持ってゆく
…コクン