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果てのない海に呑まれて
第24章 始まりは皆



「レオン様! どうして……出発は明日のはずでは?」



十三になって立派に仕事もこなすようになっていたクリスは、荷を積む作業を中断し訪れたレオンにそう尋ねた



レオンは一年ほど前からクリスたちと航海を共にしている

彼の海への熱い情熱が、当主であるベルナルドにそう判断させたのだ

実際、ファルツ家の人間がいることは交渉にかなり役立ったし、レオンの手腕は家名を優に超えるほどの実力を見せていた

彼が何かを発するだけで、そこにいる人々が面白いくらいに変わってゆくーーー





「今日はどうしても紹介したい奴がいてな」



レオンがそう言うと、後ろから黒い服を着た少年が歩み出た

その格好だけでファルツの護衛の人間だと直ぐに分かる

歳の頃は自分と同じくらいか



「兄上の側付きのミゲルだ。五年ほど前にファルツに来たのだが、普段は兄上と行動を共にしているから紹介している暇がなくてな。

今はちょうど大学が休暇中で、どうしても船を見せたかったから兄上に無理を言って借りて来た」

「……クリストフだ。よろしくな」



クリスは何故か軽い調子で挨拶をしてしまった

普段ファルツの人間と話す時は、向こうから頼まれない限りきちんとした態度を取っているのだがーーー。


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