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果てのない海に呑まれて
第24章 始まりは皆
「甲板掃除でもしてもらうかな」
と答えた
「掃除、な……」
差し出された道具を受け取ると、ミゲルはおもむろにそれを甲板に滑らせる
「……なんだよ、意外と上手いんだな」
「昔よくやっていたからな」
ふぅん、と言って少し黙っているクリス。
彼の視線はミゲルの浅黒い肌に向けられているようだった
「……なぁお前、もしかして異民族か?」
「だったら何だ」
ミゲルはその質問に今までで最も素早く言い返す
「まだ何も言ってねぇだろ。そんなトゲのある言い方すんなよ」
「大概の人間にとっては異民族と…ケチュア人と口にしただけでそれは馬鹿にする時だ。俺たちを貶すことは絶対に赦さない」
「……自分の血筋を誇りに思ってるんだな。なんか意外だ」
「……」
再び黙り込んだミゲルにクリスは苛立ちを隠し切れなくなってきた
これでは会話が続かない
「おい、いい加減にしろよ!
人の言うことに答えねぇ、目も合わせねぇ! 失礼だぞ!」
「素性も知らない人間にそんなこと出来るかよ」
「……ふん、臆病者」
「…っ……!」
ガタンッ!
ミゲルが勢いよく立ち上がり、その弾みで水桶がひっくり返った