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果てのない海に呑まれて
第4章 赤の魔物



次の瞬間、鋭い音共にレオンの頬にじんじんとした痛みが広がった



「触らないで!」



物音に気付いたミゲルが部屋に駆け込んでくる

レオンはそれを手で制して二人きりにするよう合図した



「逃げてきたお前を匿い怪我を治し服までくれてやった。一体何が不満だ?」



ミゲルが出て行った後、レオンは静かに、それでいて威圧的に問い掛ける



「匿った? 自分の欲望を満足させただけじゃない! この服だってどうせ人から奪ったものなんでしょう!? 野蛮だわ!」

「……」



激しく捲くし立てるリリアにレオンは少しため息をつく



「野蛮なのは否定しない。お前の家の船から奪ったことだってある」



そう言って隅に置かれた水瓶を顎で指した



「だが人へ贈る物を奪ったりはしない」



そして紳士的な笑みを浮かべる

リリアはその美しい顔に一瞬頭が真っ白になった



なんて温かい笑みだろうと−−−



だがすぐに首を振ってそれを打ち消す



“そういう顔をすれば女がどう思うか分かってやってるんだわ……そうはいくものですか!”


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