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果てのない海に呑まれて
第4章 赤の魔物



「おい!」



突如外からかかった大声にリリアはびくりとして立ち止まる

その瞬間、背後からレオンに捕えられてしまった



「船尾で暴れ回るな馬鹿!」



外の声はそう怒鳴ると荒い足音を立てて遠ざかっていった



「……お前が逃げるからミゲルに怒られたじゃないか」

「……貴方が追い掛けるからでしょう」



リリアはまだ諦めずに逃れようと体を動かす

レオンはそれを押さえつけるように彼女を抱く腕に更に力を籠めた



「リリア」



後ろから彼女の耳に囁きかける



「それほど嫌なら、最後のチャンスをやろう」



その言葉にリリアの唇が薄く開いて震えた



「この船は明日の日暮れ前には港に着く。それまでに私を受け入れたらお前の負け。私のものになれ。

もし拒み続けることが出来たなら……お前の勝ちだ。自由にしてやる」



受け入れるだとか拒むだとか、勝つだとか負けるだとか、それをどう決するのか今のリリアにはよく分かっていた



「随分と自分本位な勝負ね」



俯いて小さく呟く



「辞退か? 不戦敗になるぞ」

「……」



少し間を置いて、リリアはゆっくりと首を横に振った



“これしかチャンスがないのなら”



顔を上げ、覚悟を決めた瞳で真っ直ぐ前を見る



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