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果てのない海に呑まれて
第28章 天乱る〈ソラミダル〉
‘故郷だからじゃない! 貴方が行くから行きたいの!’
リリアはハッと小さく息を呑んだ
‘貴方と一緒にいたいから!’
そうだ
自分で言っていたはずだ
ずっとシエラに戻りたかった
故郷に戻りたかった
でも今は違う
自分の為ではない
シエラに、“行きたい”ーーー
“そうよ……”
目指す場所は同じでも、そこに辿り着くまでの道は違う
たとえどんなに時間がかかっても、きっとーーー
「ミゲル!」
リリアはマストから身を乗り出し、強くその名を呼び掛ける
先ほどまでと全く違う彼女の様子にミゲルは驚いたように顔を上げた
「やっぱり私、レオンから離れない! だって戻るんじゃない……進んでいるんだもの!
彼が進む道が私の進む道よ!」
その声は船室にいるレオンにも届いたろうかーーー
レオンは書類を綴っていた手を止め、気付かされたように唇を薄く開いていた