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果てのない海に呑まれて
第29章 ヨイノトキ



それを聞きながら、ミゲルはぼうっと空を見上げていた



「報告は終わったのか?」



甲板に上がって来たルチアーノがその様子を見て声を掛けた

それに対し首を振って答える



「わざわざしなくてもとっくに気付いているだろう」

「……それはそうだが」



報告–––それはもうかれこれ二時間ほど前に船がシエラの港に入ったというものだ



「どうした、元気がないな」

「…そう見えるか?」



普段から何事も表情に出すことのないミゲルだが、さすがに幼い頃から見て来たルチアーノには勘付かれる



「何となくだが」

「ああ…なんというか、少し……酔った」

「……?」





もちろん船の揺れなどではない

















中の二人が醸し出す、この甘い空気に–––。














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