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果てのない海に呑まれて
第29章 ヨイノトキ
「ミゲル! また来てくれたんだね!」
入るなりすぐに彼に気が付き走って来たのは、真っ直ぐに長い黒髪の女。
彼女は–––いや、彼女の後ろに控える女たちも皆一様に胸を露わにし、そこから下は薄い布一枚で覆われているのみ
「久しぶりだな、ヘレーネ」
ここは女がその身を売る場所
娼館だった
「今日は一人かい?」
ヘレーネと呼ばれた女はここではちょっとした古株らしい
その大人の魅力は他の若い者たちに全く引けを取っていないが–––
「もちろん今日もあたしと……」
「いや、それはやめておく」
ミゲルは全く靡かずすげなく断った
それどころか彼女には目もくれず部屋を見渡している
「それより、ここで一番若いのは誰だ? 十五…いや、十六歳くらいはいるか」
「はぁ?」
ヘレーネはその質問に思わず呆れ顔になった
「あのね、前に言わなかったかもしれないけど、うちはそんな可哀想なことはしないんだよ。若くて十八。第一そんな娘がいたらあたしなんかとっくにお払い箱だろ?
そのくらいの歳の子なら普通に働かせて……」