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果てのない海に呑まれて
第29章 ヨイノトキ
「では金髪の娘は? それならこの地方にはたくさんいるだろう」
「……」
「ヘレーネ?」
急に静かになったことに眉を寄せ、ミゲルはここで初めて彼女をまともに見た
「……?
ヘレ……」
「ちょっとこっち来なっ」
「お、おい!? 俺は……」
腕を掴まれ、驚きで振り払うことも出来ないまま奥の部屋へと連れ込まれる
バタンッ
荒々しくドアを閉める音とともに連れ込まれたそこは娼婦たちが客のために軽食や酒を用意する場所らしかった
部屋の隅にある椅子まで引っ張って行かれ、半ば投げるように座らせられる
「あんたねぇ!」
ヘレーネはそんな少々情けない格好のミゲルの前に仁王立ちになり、腕を組んで彼が文句を言い出すより先に口火を切った
「誰にフラれたのか知らないけど、そんな気持ちでここに来るんじゃないよ!」
「なっ……」
ルチアーノにさえ分からなかったことを会って数秒でほとんど言い当てられただただ目を丸くするミゲル