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果てのない海に呑まれて
第29章 ヨイノトキ
「ハァ……あたしが今まで何人の男相手にしてきたと思ってんだい?」
ヘレーネはますます呆れたように続けた
「確かにあたしらは客を慰めるのが仕事さ。けどね、抱かれてる間は女なんだよ。目の前のあたしらを見て欲しいんだよ。
あんたの傷んだ恋心を慰めるのなんか真っ平ごめんさ」
ミゲルはしばらく何も言えないまま、ゆっくりと視線を落とした
「……すまなかった。どうか…していた」
慣れない感情に身を任せるものではないな–––
「今日は強い酒でも一杯おごってやるからさ、それ飲んで帰んな」
そう言ってヘレーネは雑多な机の上からグラスと酒を用意する
「にしても、主人に全部取られたんじゃないかって言われるくらい堅物のミゲル様が……」
さも愉快そうに笑ってミゲルに手渡す
「あんたが惚れるんだから、相当可愛い子なんだろうねぇ」
「ああ、誰よりも……」
「妬けるねぇ」