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果てのない海に呑まれて
第29章 ヨイノトキ
ミゲルはグラスに映る自分の姿に目をやり、レオンに負けず劣らず蕩けた瞳に思わず杯を一気に傾けた
「で、テキはレオン様かい」
「ああ」
それはまた、とため息をつくヘレーネ。
「随分手強いテキさんだ」
”ま、あんだけずっと一緒にいりゃ同じ女に惚れるのも当たり前なのかね”
二人の間には他人など入り込めないくらいの何かがある
そんな彼らの間に立ってみせた娘なのだから–––
「ほんとに怖いのは、さて誰かねぇ」
「なんだ?」
「いや、なんでも。こっちの話さ」
ヘレーネはミゲルの新たな一面に緩んでくる顔を咳払い一つでなんとか正した
「だけど、レオン様には意外と脆いところもあるから……」
「分かっている」
それを救うほどの力があるからこそ、レオンは彼女を傍に置く
「あの人がちょっとでも弱気になったらその隙に奪っちまいな」
「そうだな……ん!?」