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果てのない海に呑まれて
第30章 主の姿
「……」
「……」
沈黙の中、二人は暗い道を足早に歩く
“リリアに何かしらの真実を告げる時、あいつはいつもどこか言い淀んでいたな……”
その理由が、やっと分かった
愛する者が苦しむ姿など、一体誰が見たいだろうか
”違う……”
自分は、知っている
大切な者を苦しめる痛みを。
そしてそれに耐える術を。
”俺はレオンとは違う”
「リリア、落ち着いたらお前に言っておきたいことがある」
「……?」
「レオンは止めるだろうが……お前は知っておくべきだ。その権利がある」
その横顔は、何かを覚悟しているようだった
”ミゲルは……”
時々すごく遠い顔をする
何もかも一人で抱え込むような眸。
自分のことなどどうでもいいというような、そんな–––。