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果てのない海に呑まれて
第30章 主の姿
レオンにも似たようなところがあった
自分が救われることより、ミゲルやニノのような者を救おうとする
何故そんな生き方が出来る
そして私は、彼らに何か一つでも返せているのだろうか
彼らのために、そんな生き方が出来るのだろうか–––
「……」
考え事をしていたリリアは、突然歩みを止めたミゲルに危うくぶつかりそうになった
「……誰だ」
「リリア…リリア・デ・ギスタールか?」
自分の名前が聞こえ驚いて顔を覗かせる
そんな彼女を止める–––庇うように、ミゲルは片腕でそれを制した
「いや。人違いだ」
「そんなはずはねぇ。オレには分かる」
聞き覚えのある訛り方にリリアはもう一度前に進み出た
ミゲルの視線の先には、浅黒い肌に黒く長い髪を靡かせた異人
ケチュア人だ