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果てのない海に呑まれて
第30章 主の姿
“俺は、違う”
ただ警戒するだけだ
出会った者は全て敵。
例えレオンが否定しようと、自分だけは信じるまいと。
それが蛮族と虐げられ、主人を殺された彼の生きる道だった
だか、今この状況にあっては–––
本当に味方が増えるのならそれは心強いことだ
「……いいだろう。その長のところへ案内してくれ」
彼はリリアの信じるものを信じると決めたのだった
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「……どうした? 何か気になることでもあったのか?」
歩きだしてからしばらく–––薄暗い裏路地に差し掛かると時折足が鈍るリリアに、ミゲルが小さく尋ねた
「あ……いいえ、なんでも」
不安なのか
–––いや、そうではない
どことなく哀しげな、申し訳なさそうな顔だ
ミゲルはもう一度訊こうと口を開いたが、そこから発せられたのは低い呻き声だった