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果てのない海に呑まれて
第31章 交錯
他の誰よりも長い黒髪–––床に届きそうなほどの豊かな髪を持つその男が部屋をぐるりと見渡せば、大半の人間がギクリとたじろいだ
「リリア…か……?」
彼がある一点でふと目を止めると、威圧感が一気に消えてゆく
自分の名前に反応してリリアはゆっくりと顔を上げた
「…リー……?」
その瞳にみるみる涙が溜まってゆく
「なぜ彼女が此処にいる」
リーはカレルを思い切り睨み付けた
大きくて比較的可愛らしい目をしているのに、そんな雰囲気は微塵も感じさせない
「此処にいるレオン・ファルツ様がね、送り届けてくれたんだよ」
それでもほとんど怯むことなく皮肉を放つカレル。
「なら君が、リリアを攫った張本人か」
その言い方にリリアが口を挟んだ
「そんな言い方しないで! レオンは私を匿ってくれたのよ。ミゲルも私を助けてくれた……サラディ家に乗り換えた貴方たちとは違うわ!」
リーが思い切り傷ついた顔をする
「まぁそう言ってやらないで、気の強いお嬢さん」
「私の家を滅ぼしておいて、気持ちの悪い言い方をしないで」
「……なら、“口を慎め。負け犬の小娘が”
これでいいかな?」
「……」
リリアが黙ったところで、カレルは後を続けた