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果てのない海に呑まれて
第32章 そしてまた一人
「お前は一人だ」
“…お父様……!”
父の、剣だ
代々ギスタールに受け継がれ、あの夜リリアを背に庇った–––
「ぉ…父様…お父様……っ」
縋るように涙を流す彼女の前に、リーが庇うように立ち塞がった
「一人じゃない……今も昔も。彼女には俺がついている」
「……」
カレルは一瞬無表情になったかと思うと、顔を歪め目にも止まらぬ速さで腰の短剣を引き抜いた
「グッ…‼︎」
投げ飛ばされた短剣に呻き声を上げたのはリーではなく–––
「な、にを……!」
部屋の端で待機していた裏切り者のケチュア人だった
「……っ」
「仲間一人留めておけない……同胞を守ることさえ出来ない。
そんなお前に何が出来る?」
「……黙れ…」
リーがユラリと体を揺らし、戦闘態勢に入る
その眸には獣じみた爛々とした光が宿っていた