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果てのない海に呑まれて
第33章 傍に居たい人
「…貴女は、ここに来て長いのかしら?」
すっかり体を洗い終える頃、リリアが遂に口を開いた
「どうしてですか?」
「色々知っているようだったから……ファルツ家との関係とか」
「……そうですね、私はこの家に嫁いで五年ほどになります」
「嫁い…で……?」
湯船から出て体を拭こうとした手が止まる
「ええ、私は……カレルの妻、ブリジッタと申します」
「……」
ポタッ...
理解出来ないと固まるリリアの胸から雫が落ちる
「どうして……」
「あの方がそう望むので。それ以外に理由はございません」
まるで召使いと変わらないことに対する疑問に答え、ブリジッタはリリアの代わりに彼女の体を拭き始めた
「お綺麗ですね、奥様」
それは皮肉でも何でもなく、心からリリアを妻として認めている風だった
「私もこれほど美しければ、あの方に見て頂けたでしょうか……」