この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第33章 傍に居たい人
「どうして抵抗しないの」
ブリジッタは彼女の哀しそうな眸に、自分を捕らえた男の影を見ない
「何故ですか? 私はこれで幸せです……彼の側にいられるだけで幸せです」
「そんな……」
理解が出来ないのは、自分の我が儘なのだろうか?
「いいえ奥様。愛にも様々な形があるということですよ」
ブリジッタは無垢な子供に話し掛けるような口調で、リリアにそっと寝着を渡した
「愛しているというの? あの人を?」
「昔は嫌いでした……でもある時突然惚れてしまったんです」
そう言って少し恥ずかしそうに笑う彼女は、喜びに満ちていて。
“女としての悦びは…与えられたことがないけれど……”
自分が惚れたあの恍惚とした美しさを、自分の身体で引き出せたらどれほど嬉しかったか
「奥様も、そうだったのでは?」
「……!」
嫌いだった
けれどいつの間にか、彼に心惹かれて–––。