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果てのない海に呑まれて
第33章 傍に居たい人



「どうして抵抗しないの」



ブリジッタは彼女の哀しそうな眸に、自分を捕らえた男の影を見ない



「何故ですか? 私はこれで幸せです……彼の側にいられるだけで幸せです」

「そんな……」



理解が出来ないのは、自分の我が儘なのだろうか?



「いいえ奥様。愛にも様々な形があるということですよ」



ブリジッタは無垢な子供に話し掛けるような口調で、リリアにそっと寝着を渡した



「愛しているというの? あの人を?」

「昔は嫌いでした……でもある時突然惚れてしまったんです」



そう言って少し恥ずかしそうに笑う彼女は、喜びに満ちていて。



“女としての悦びは…与えられたことがないけれど……”



自分が惚れたあの恍惚とした美しさを、自分の身体で引き出せたらどれほど嬉しかったか



「奥様も、そうだったのでは?」

「……!」



嫌いだった

けれどいつの間にか、彼に心惹かれて–––。


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