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果てのない海に呑まれて
第33章 傍に居たい人



命に別状はなかったが、頬には痛々しい痕が残り。

母はそれを忌み嫌ってカレルを遠ざけた

皇帝との繋がりだけは切れぬよう、同じように醜い娘を使って。



「あの方にさえ利用されてるのは承知の上……それでもいいんです」



幸せなんです–––



「……」



口には出されなかったが、そう想う彼女の気持ちは苦しいほど伝わってくる

だからリリアは何も言わなかった



「リリア様」



ここにきて初めて、ブリジッタがリリアの名前を呼んだ



「もし私に同情して下さるのなら、お願いです……私を側に置いてください」

「え……?」

「貴女には敵いませんから、私はきっとあの方に捨てられる……けれど、せめて彼の傍にはいたいのです。

彼はきっと私を疎むでしょうけど……」

「あなたに、私の召使いになれと?」



縋るような目で小さく頷く



「……」



リリアは寝着を正すと、窓の側に歩み寄った


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