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果てのない海に呑まれて
第34章 退けない現実




「俺の我儘のために、お前たちを危険に晒すかもしれない」

「ケチュア人の信念は一人一人の信念でもある。お前が先に立ったことで全員が倒れたとしても、一体誰がお前を責める?」

「それにオレたちの長はいつだって自分が一番の犠牲を払うからな。お前が欠けたら終わりなのに、忠告なんか聞きゃしない」

「真っ先に突っ走っていくよな」

「ほんと、残されるこっちの身にもなってほしいぜ」

「ああ、分かった分かった」



いつの間にやら日頃の文句を並べ始めた二人にリーは苦笑した



「ただ……それは狩りの時の話だろ」

「そうだな。今度の獲物は今までで一番の厄介だぜ」

「何せ手負いの獅子だからな」



左目の下から口までを手で切る仕草をしてみせ、友人はニヤッと笑った



「はぁ、全く……」



ふざける二人に呆れながらも、リーの眸に獣が宿る



「それで? どうする、若長」

「まずは……」





テントの布を上げ、光に染まり始めた街を見下ろす







「与えられたエサを、奪い取る」










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